会期:2023年9月27日(水)~10月1日(日)
主催/エリムの泉 ROOM316 共催/福島第一聖書バプテスト教会
福島県いわき市泉町にある多目的福祉施設「エリムの泉」は、2011年の東北大震災と原発事故により同県大熊町から避難移転した福島第一聖書バプテスト教会が設立母体の宗教法人です。緑地と植栽を備えた敷地に地域の皆さんがくつろげる図書室もある多目的ルーム通称「サロン」(正面)や、和定食中心の食堂「野みつ」(左棟)があります。職員の多くは福島第一聖書バプテスト教会の信徒さんたちです。
食堂「野みつ」は美味しさと膳立ての美しさからSNSで評判となり、今や地域の隠れ家的人気店となっています。通常営業のほかに、子ども食堂や独居高齢者向けの無料ランチを定期的に実施しています。写真右は、日没後のアプローチ風景。
そして宿泊居住棟(ケア付)は震災で住まいを失ったご高齢の方々などが入居なさっています。その建物の1階右端がギャラリー「ROOM316」。ちぎり絵展はここで開催されました。
ROOM316は、新約聖書ヨハネの福音書3章16節のことば「神は実にそのひとり子をお与えになったほどに世を愛された。それは御子を信じる者が、一人として滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。」からの命名です。
実はこのちぎり絵展は2020年春、コロナ禍により会期の数日前に無念の中止となりました。その時は「エリムの泉」竣工お披露目イベントとしての位置づけでした。
これは2020年当時の案内状。すでに関係先に郵送され、全県にご案内済みでした。早春だったこともあり、教会の新たな旅立ちをイメージ、イースターがテーマのこの絵のタイトルは「復活」。
ということで、ここからはその復活したちぎり絵展をご紹介します。搬入当日の朝、自宅玄関に出した作品額や備品類の輸送は・・・
なんと福島第一聖書バプテスト教会の佐藤彰牧師夫妻が、自ら運転されるお車で私の家まで来て下さいました。前日から埼玉県入りしておられたのです。
恐縮しきりの私に、震災で他県に避難している教会員の問安を兼ねて移動しているのでお気遣いなく、という温かいお言葉。ワンボックス車に荷物を積んで東北道から常磐道へと走りました。
奥様も交えて車中で楽しくおしゃべりしているうちに、昼前にはいわき市に到着。現地ではエリムの泉の職員さんや教会の皆さんが待ち構えていて下さり、午後1時から設営を開始しました。
「ROOM316」は本格的なギャラリー仕様なので、設営は順調に進み、壁面に20数点、テーブルの平置きに十数点の作品を配置しました。
そしてオープン!5日間の会期中は近隣から、遠方から次々とお客様が来場。「3年間待っていました」とお声がけ下さる方も。展示テーブルの中央には外庭から採ったミモザの枝と紫陽花が活けられています。
7月の徳丸町キリスト教会で作っていただいた、作品の詳細を読める「鑑賞ガイド」。「福島エリムの泉バージョン」も用意しました。徳丸町キリスト教会のHさんがボランティアで作ってくれたのです。この鑑賞ガイドと一緒に、EHC発行の森住のトラクトを入場者に配り、その配布数によって入場者数をカウントして頂きました。
会期中は午後になると「野みつ」からスイーツが届きました。スタッフの皆さん本当にありがとうございます(感涙)。お昼ごはんも美味しく、毎回洗練された盛り付け!これはSNSに写真を挙げたくなりますね~♪
エリムの泉のちょっと奥まった所にあるこの建物。心を静めて祈るための小さな礼拝堂です。中は高い天井、十字架、木の椅子と小机がありました。
またお庭にはひっそりと水琴窟が! 「エリムの泉」の植栽や外構設備を担当されているクリスチャンの職人さん(埼玉県久喜市在住)が自作なさったと聞いてびっくり。
居住棟にはこの庭が見える本格的な「茶室」があり、このヴューは地域の方々を招く茶会は最高のおもてなしですね。写真では見えづらいですが、ここには水流で竹筒がカコーン!となる「鹿威し/ししおどし」もあります。
そしてこのお庭、何とミスト装置まであるのです。これもその方のいわば「手作り」だそう。この日、定期的なメンテナンスを兼ねてちぎり絵展に来場され、直接お話をお聞きしましたが、これ個人で造作なさったの?ええええっ⁉と、もうびっくり!
会期中はずっと強烈な日差しの猛暑日が続いていましたが、ミストが出ると周辺からわーっと歓声があがりました。でもショーではなく庭の植栽を守るためなんですね。「10年後に良い庭になるように手入れしてゆきます」とおっしゃる横顔が印象的でした。この庭は幸せですね…。
こちらは、エリムの多目的ホール。図書棚には絵本もあり子育て中のお母さんも入りやすそう。ちぎり絵展の会期中はご来場者のお休み処や歓談スペースになりました。
私のトークイベントもここで開かれ、スライド画像を使ってちぎり絵のことや、クリスチャンになるまでの経緯を、40分ほどお話させていただきました。ワークショップもここで実施しました。写真は佐藤将司牧師が私をご紹介下さっているところ。
これはホール備え付けのテーブル。卓を斜めにした状態で展示ボードに。貼ってはがせる練りゴムで接着しています。
今までにないテーブル活用法でした(笑)。
そしてここが、エリムの泉から徒歩数分にある福島第一聖書バプテスト教会、「泉のチャペル」。故郷の大熊町に向かって飛び立つ翼のかたちをしていて「翼の教会」とも呼ばれています。いつの日か故郷に帰る。そんな祈りが込められた建物です。
礼拝堂内部。正面の講壇の背後には、米国の教会から寄贈されたガラス洗礼槽が見えます。十字架のある壁の背後あたりに、震災後に亡くなって故郷に葬ることのできない信徒の皆さんの納骨室があります。骨箱と共に思い出の品も保管されていました。礼拝堂の側面にある聖書物語がモチーフのステンドグラスが非常に美しいです。
全部はご紹介しきれませんが、頭上のステンドグラスは夜になると教会の脇を通る主要道路から燦然と輝いて見え、ここに十字架を掲げた教会があることを街の人々に知らせています。
この輝きは、企業ロゴや商業看板が混然とする国道沿いに屹立する十字架とともに、重要な街のアイコンになっていると私は感じました。
ちぎり絵展最終日は日曜日。すっかり親しくなった教会の皆さんとご一緒に日曜礼拝を捧げ、短いご挨拶と感謝を述べさせていただきました。
「震災と原発ですべてを失った深刻な事情があるとしても、ある日突然いわき市にやって来て、教会を建てて集まっている『よそ者』が私たちです。だから地域の方々に私たちを知っていただき、少しでもお役に立つ働きを心がけ、教会が来てくれてよかったと言ってもらえるような私たちになってゆきたいのです。神さまのご栄光をあらわすために。」と、佐藤彰牧師は折に触れ何度もそう繰り返しておられました。
教会エントランス。震災からの怒涛のような流浪、奥多摩での避難生活、そして翼の教会へ。その物語を象徴するオブジェが飾られています。写真はその一部。佐藤将司牧師の妻、涼子夫人の作品です。
礼拝堂の隣にある教会のミーティングルーム。3年前に打ち合わせに伺った時には地域の方々の編み物教室が開かれ大にぎわい。奥のキッチンでケーキが焼かれ、コーヒーのいい香りがしていました。
コロナで中止となったちぎり絵展ですが、その間も神さまは背後で教会の営みを豊かに耕しておられました。当時は開業直後だった食堂「野みつ」はこの3年で地域にすっかり定着し、常連さんも多いお店になっていました。
教会はコロナ前からスペースを市民活動に広く開放し、イベントやサークル活動を通して地域の方々と粘り強く交流を持っていました。コロナでいったん途切れたその輪が今回のちぎり絵展で一気に復活し、会場のあちこちで市民の方々との再会があり、もう一度集まろう、そうしましょう!という声が広がってゆく様子を目撃させていただきました。
ちぎり絵展をお手伝い下さった教会のみなさん。右端は佐藤将司主任牧師。
「3年前のコロナ、あの時無理にちぎり絵展を決行しても、こんな素晴らしいものにはならなかったと思います。これが神さまの時というものですね。」という教会の方々の言葉が本当にうれしいちぎり絵展でした。福島第一聖書バプテスト教会の皆さま、いわき市のみなさま、県外遠方よりご来場の皆さま本当にありがとうございました。