ビル街の銀杏

(2019年月刊マナ11月号表紙・2021年工房カレンダー11月使用)

数年前の晩秋、山の手線の窓から東京駅周辺の無機質なビル群を見ていた時のことです。ふと、このビル街の隙間に一瞬でもいい、黄金の銀杏並木が見えたら閃光のようだろう。と、わりと真剣に目を凝らしましたが(笑)黄金は見つかりませんでした。なので、この絵はその時のマボロシです。ビル、銀杏並木、街路灯。よく見るとこんなサイズ比はちょっとありえないし、雲の映り込み方も実際は違うでしょうね。でも、和紙でガラス建材を現すのはちょっと楽しかったです。

一枚の和紙が仕事場の保存箱に長い間眠っていて、ある日突然、これをおいて他に無い!というくらいの出番を迎える。このビルのガラス面に使った青い和紙がそうでした。画面左側のビル、雲が映り込む反射面。これはむら染め和紙の一部分を、雲の反射にあわせた位置に貼り込み、ほんの少しだけ白い薄紙でハイライトを加えただけです。右のビルの淡い反射も、同じ和紙のムラ部分をほどよい位置に持ってきて貼りました。原画のサイズは20㎝四方ほどですから用いた部分の紙のサイズは、まあ、とても小さいです。

買ってみたものの、いつ、何に使うのやら。そういう和紙が引き出しにはゴチャッとあるのですが、これだから仕事部屋が片付かないったらありゃしないです。

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