(2021年 月刊マナ11月号表紙絵)
和紙をダイナミックなグラデーションに染めたものを「茜染め」と呼ぶそうです。和紙店の陳列棚でこの紙に出会った時、紙面いっぱいに美しい夕焼け空がひろがっていて、この色合いを希求した職人さんの心が沁みるようでした。 この作品はその和紙の一部分をそのまま背景に用いています。
夕焼け雲は数種類の土佐典具帖紙を貼り重ね、シルエットには濃紺の和紙を使いましたが、そもそも背景の茜色があればこその作品です。どこの誰が染めて下さったのか知ることはできませんが、その職人さんに感謝で一杯です。
「茜染め和紙」は、夕焼け色に限らず、深い海を思わせる濃紺~淡青、口紅のような緋色~薄紅、暗闇の暗黒色~薄暮色など、さまざまなバリエーションがあります。でも、考えてみれば、それらはすべて刻々と変化する空の天幕の色でもありますね。